眉毛下切除術(眉毛下切開)について
眉毛下切除術とは、その名の通り、眉毛の下で余分な皮膚や皮下組織切除するという方法です。医師によっては、皮膚と皮膚の下の筋肉である眼輪筋も切除される方もいます。これを行うことで、上まぶたのたるみを取ることができます。
目を開ける力は正常に伝わっているのに、上まぶたの皮膚が垂れて視界を遮っているような上眼瞼皮膚弛緩症の方は、上まぶたの皮膚のたるみをとるだけで、症状が改善されます。
上まぶたのたるみを取るのであれば、上まぶたを切って上まぶたの皮膚を取ればいいのでは(瞼縁切開術)、と思われる方もいるのではないでしょうか。
それも間違いではないのですが、まぶたの部分であまりにたくさんの皮膚を切除すると、上まぶたの薄い皮膚と、眉毛近くの厚い皮膚を縫合することになり、質感の違いによる違和感が生じ、厚ぼったい上まぶたになるため、たくさんのたるみを切除する必要がある場合に、眉毛下切除術はよく用いられます。
【眉毛下切除術の良い適応例】
70代男性の方です。上まぶたの皮膚が垂れ下がり目にかかって見えづらいとのことで受診されました。外側優位に余剰皮膚が多く、MRD-1(瞳孔中心と瞼縁(睫毛の生え際)の距離)は3.5mmと挙筋腱膜から瞼板へと伝わる目の開ける力はある程度保たれていると判断し、眉毛下切除術の適応と判断しました。
主な原因である多量の余剰皮膚を眉毛の下で切除しています。皮膚の下の筋肉はタッキング(縫い縮めること)でさらに目を開きやすくしています。
- 副作用(リスク)
- 皮下出血班、左右差、瘢痕、眉毛内側の縦じわ
- 費用(手術代)
- 両側24,280円(負担2割の場合)
- 治療期間
- 術後約1週間で抜糸
ここでは眉毛下切除術の注意点をまとめてみました。(形成外科医師向けの本には大体書かれている基本的なことです)注意点を理解することで、どのような場合が良い適応になるかなども分かりやすくなると思います。
【眉毛下切除術の注意点】
① 眉毛内側の傷痕は目立ちやすい
② 上まぶた内側(目頭付近)のたるみはあまり取れない
③ 上まぶたには手を加えられない(同時に二重にしたり、挙筋前転術を行えない)
④ 眉毛下の内側の縦じわが出現することがある
順番に説明していきます。
① 眉毛下縁の傷痕は、時間が経過すれば目立ちにくくなります。長い眉毛が生えている男性などは特に、眉毛が伸びて傷痕を隠すので目立ちにくいです。逆に眉毛の薄い女性では、(女性の場合メイクで隠すことができますが)まれに傷痕の赤みが残る人がいます。
内側の傷は目立ちやすいため、眉毛内側の開始点は眉毛内側から5mm以上離して、また毛包を温存して創縁(傷痕)が眉毛に隠れるように、皮膚を切開する際に『毛包斜切断法』という工夫を行うこともあります。
- 副作用(リスク)
- 皮下出血班、左右差、瘢痕、眉毛内側の縦ジワ
- 費用(手術代)
- 両側36,420円(自己負担3割の場合)
- 治療期間
- 術後約1週間で抜糸
② デザインからも分かるように、内側(目頭付近)のたるんだ皮膚はあまり取れません。内側の皮膚もたるんでいる場合は、上まぶたで皮膚を取る瞼縁切開の方がいい場合があります。逆に外側(目尻付近)にたるみが多い人は、眉毛下切除のよい適応です。
③ 前のページでもお伝えしたように、上まぶたの皮膚がたるんでいる人の多くは、腱膜性眼瞼下垂症を合併しています。そのような場合は、余剰の皮膚を切除するのと同時に、挙筋前転法を行わないと症状は改善しません。
④ 余分な皮膚を切除して縫い縮めると、両端にたるんだ皮膚が集まり盛り上がります。これをdog earといいます。これを防ぐために、デザインが工夫されて現在の様なデザインになっています。内側はあまり皮膚が切除できず、術後に縦じわや陥凹変形が生じる場合があります。これは時間が経過すれば消失することが多いですが、稀に残る場合があります。予防するために、内側皮下を広く剥離したり、縫合前に筋肉を縫い縮めて発生を予防する、内側の創縁にかかる緊張を減らすように縫合するなどの予防策をとることがあります。
眉毛下切除術は皮膚を切除して縫合するというシンプルな手技であるが故に、保険診療、自由診療(自費診療)問わず幅広く行われていますが、どこで手術を受けるのであれ、上記の注意点をよく理解した上で受けられることを強くオススメします。